ここからはM&Aコンサルティングの業務内容を、M&Aが進行する流れに沿って解説します。M&Aコンサルティングを依頼する際の参考としてください。
▷M&Aコンサルティングの業務:戦略の立案・策定サポート
M&Aを実施するにあたって、まずはM&A戦略を立案・策定するのが第一歩となります。何を目的としてM&Aを実施するのか、目的のためにはどのような戦略が必要なのか、スケジューリングはどうするのかなど、M&Aの大枠を協議する段階です。
業務の中には、競合他社や業界全体の動向をマーケティングしたうえでの戦略提案や、相談を依頼した企業自身の分析・ディスカッションなども含まれます。豊富な経験・専門知識によるアドバイスにより、M&A戦略の策定を効率的に進められます。
▷M&Aコンサルティングの業務:候補企業の選定
戦略を策定した次の段階は、M&Aの候補企業の選定です。候補企業の選定は、一般的に「ロングリストの作成」から「ショートリストの作成」という流れで実施されます。
ロングリストとは、M&Aの候補として可能性のある企業を広範囲にリスト化したものです。候補企業を選定する場合には初めから範囲を限定せず、幅広い業種・地域から候補企業を検討します。
ショートリストは、ロングリストの中から、M&A戦略との適合性やシナジー効果の可能性など一定の基準で企業を絞り込み、優先順位を付けてリスト化したものです。最後にショートリストの中からより希望に合った候補企業を絞り込み、最終的な候補企業を選定します。
候補企業の選定は、納得のいくM&Aを実施するために重要な業務です。ロングリストやショートリストを作成する際は、M&Aコンサルティングと慎重に相談し、選定を進めていきましょう。
▷M&Aコンサルティングの業務:ストラクチャー(取引スキーム)の決定
ストラクチャー(取引スキーム)とは、M&Aを実施するための手法や種類のことです。ストラクチャーとしてどの手法を選択するかによって、譲渡・譲受の形は異なり、税法上の取り扱いにも変化が生じます。M&Aの根幹とも関わるため、M&A戦略の策定でも取り扱われる項目です。
ストラクチャーの主な手法には、株式譲渡や事業譲渡、株式交換や合併、第三者割当増資や資本業務提携などがあります。
例えば、株式譲渡はM&Aでよく採用される手法で、譲渡企業から譲受企業へ50%超(多くは100%)の株式を譲渡することでM&Aを行います。また、事業譲渡は株式譲渡と異なり、企業のうち一部の事業を譲渡する手法です。
ストラクチャーの決定には、法務や税務など、高度な専門的知識が欠かせません。M&Aコンサルティングや弁護士・税理士などの専門家の知識や助言をもとに、最適なストラクチャーを選択しましょう。
▷M&Aコンサルティングの業務:交渉・デューデリジェンスのサポート
候補企業を選定し、ストラクチャーを決定した後は、譲渡企業と譲受企業間で交渉に入る段階です。譲渡企業と譲受企業におけるトップ面談や、具体的な内容や条件を双方で協議します。
このような交渉のサポートも、M&Aコンサルティングの大切な業務です。M&Aの経験がない場合、交渉や条件の擦り合わせを効率的に行うことはできません。M&Aコンサルティングの助言によって、交渉をスムーズに進められる可能性があります。
交渉が合意に至った場合は、基本合意書を取り交わします。基本合意書は、これまで協議された条件や譲渡価格を整理し、まとめたものです。基本合意書を締結した後、譲受企業は譲渡企業へ「デューデリジェンス(DD)」を実施します。
デューデリジェンスは、譲渡企業の企業価値、将来性、リスクを精査する重要なプロセスです。精査する項目は、一般的に事業・財務・税務・法務・人事など多岐にわたります。M&Aコンサルティングと事前に十分に相談し、対処することが大切です。
・関連記事:M&Aの最後にして最大の難関。「デューデリジェンス(DD)」を徹底解説
▷M&Aコンサルティングの業務:最終契約書作成・クロージング
デューデリジェンスを実施し、M&Aコンサルティングを交えた最終的な交渉で譲渡企業と譲受企業で合意が得られれば、最終契約書(DA)を締結します。最終契約書は協議で得られた合意を文書化したもので、M&Aを実行する際の、双方の権利と義務を規定した契約書です。
最終契約書に記載された内容は条件が満たされることにより実行義務が発生するため、中身は慎重に吟味しましょう。なお、最終契約書はM&Aの最終段階で締結される契約の総称であり、実際の契約書は採用したストラクチャーにより異なります。
最終契約書を締結した後は、クロージングの段階に入ります。クロージングとは、最終契約書で締結した内容に基づき、M&A実行に伴う最終的な手続きを実施することです。クロージングが終了すると、経営権の移転が実行され、M&Aが完了します。
クロージングでは、主に株式譲渡や譲渡代金決済などが行われます。ただし、M&Aによりその在り方は多様で、重要取引先との契約承継に関する同意の取得や借入金の決済などが含まれる場合もあります。
クロージングは、一般的に譲渡企業と譲受企業の双方で必要項目を確認しながら進めますが、M&Aコンサルティングに相談してスケジュールや必要な書類・手続きのチェックリストを作成する方法もあります。
▷M&Aコンサルティングの業務:PMI(経営統合)サポート
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後に、譲渡企業と譲受企業の経営統合を目指すプロセスのことを指します。
M&Aでは、統合後の譲渡企業と譲受企業の業務面・意識面での融合がとても重要です。 具体的には、業務面では社内の会計システムや人事給与システムの統合、業務プロセスの擦り合わせなどがあります。また、意識面では、譲渡企業と譲受企業双方の従業員が同じ方向を向き、新しくなった企業組織への理解が重要です。
PMIはM&A後の長期間に渡るため、自助努力も大切となります。ただし、M&Aコンサルティングの豊富なM&A経験を活用し、M&A戦略策定の段階からPMIまで見通すことで、M&Aによるさらなる相乗効果を期待できます。