
薬局M&Aの手順
ステップ1:M&A対象企業の選定
まずはM&Aの目的やどのような会社に譲渡されたいか、また、その他譲渡に関するご要望をオーナーからヒアリングします。その後、M&Aの要となる秘密保持契約を結んで、財務諸表開示を行い企業価値算定を行います。次に専任契約となるM&A仲介依頼契約の締結を行い、譲受企業へのアプローチを具体的に検討していきます。M&Aと一言で言っても会社全てを譲渡するのか、一事業部門だけを譲渡するのかによって進め方が大きく変わるため、ご希望を最大限叶えるための手段を考えるステップは欠かせません。
いざ会社を譲渡するとなると、様々な業種の会社が譲渡先企業候補となるでしょう。その際に大事なことは、相手会社を偏見で判断しないことです。過去のM&A成約事例の中には、北海道の温泉旅館をシンガポールの個人投資家が買収したり熱帯魚ショップを会計ソフトウェア会社が買収して成功を収めているケースも珍しくありません。多種多様な業種の会社を選択肢に含めておくことと、自分が思いもよらないような会社からM&Aのオファーが来ても関心を持つことが理想のM&Aを成立させるコツです。
ステップ2:トップ面談
譲受企業候補を1社に絞れたら、次はトップ同士の面談を行います。直接対面することで、お互いの事業内容や意向を確認しておきます。この段階で重要なのは、お互いの経営方針や会社のカルチャーが合致しているかどうかの確認です。M&Aは会社同士の「結婚」と言われていますが、M&Aにおけるトップ面談は「お見合い」だと考えてください。留意しておいて頂きたいのは、ここは決して条件交渉の場ではないということです。
事前認識を確認し相互理解を深めた後に、譲受企業は誠実に経営してきたか、自分が手塩をかけて育ててきた大切な会社を任せることができるかという点を判断して頂く場がトップ面談です。トップ面談の結果、万が一譲渡することができないと考えた場合には断る事もできますのでご安心ください。
ステップ3:デューデリジェンス
トップ面談の後、ともにM&Aのスケジュールや金額の大枠を確認する基本合意契約を行ったら、デューデリジェンス(買収監査)を行います。デューデリジェンス(買収監査)とは簡単に言うと売却先企業の調査活動のことです。単に調査といっても様々な切り口がありますので、どの分野の調査をしたいのかをオーナーからしっかりヒアリングします。
デューデリジェンスにより調査する内容はビジネス面、財務面、法務面、労務面、税務面、IT面など様々です。全ての調査を実施できることが望ましいですが、優先順位をつけることでコストを無駄にしないですみます。何を知りたいのか、それを知ってどうしたいのかをしっかり決めた上で、必要な情報収集を行いましょう。
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ステップ4:クロージング
デューデリジェンスが終わり、譲受企業、譲渡企業ともに最終的にM&Aを実行することが決定したら、最終的な条件や内容を取り決めた「最終譲渡契約書」を締結します。これによりM&Aの契約そのものは完結し、手続きの処理に移ります。ここでのクロージングとはM&Aでの経営権の移転を完了させる最終的な手続きのことを言います。具体的には、株券の引渡しとその対価の支払い、役員の改選等が必要な手続きとなります。
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薬局のM&Aにかかる期間
交渉にかかる期間
上記でご紹介した手順は交渉の一部分の抜粋であり、他にも様々な事を取り決める必要があります。加えて、いくら譲渡企業が迅速にM&Aを進めたいと思っていても、譲渡先企業の意思決定が遅い場合は想定以上に交渉に時間がかかります。最短2週間で契約締結という例もありますが、稀なケースとお考え下さい。M&A自体に最低でも6ヶ月~1年はかかります。M&A準備の理想のタイミングとしては経営者の引退から見積もってだいたい2年~3年前です。このくらい時間があれば弊害が生じても着実に解消できるでしょう。
まとめ
M&Aの期間はオーナーの方の信念や、譲受企業側の意思決定のスピードなどが関わってくるのでケースによって変動があります。しかし、大切な会社の未来を決める重要な決断ですから、焦って決断を下さずじっくり時間をかけ、心から納得できるような交渉を行いましょう。