国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件!

最近、ニュースやCMなどで「M&A」という言葉をよく耳にするようになったと思いませんか。
昨今の国内市場の成熟化や人口減少、グローバル化などに伴い、従来に比べて経営判断がさらに難しくなっている中で、中小企業においては経営者の高齢化や人手不足といったさまざまな問題が顕在化しています。このような状況の中で、中小企業のM&Aの件数は、近年増加傾向にあります。
本記事では、M&Aの推移や動向、中小企業を取り巻く環境について解説します。
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参考URL:2018年M&Aの回顧
参考URL:2018年版 中小企業白書
国内M&A件数の推移と動向

『2018年版 中小企業白書』「M&A件数の推移」より作成
日本のM&A件数は2017年に3,000件を超えています。また、2018年のM&A件数は3,850件、金額は29兆8,802億円と、件数・金額ともに過去最高を更新しました。これは、これまで最多であった2017年のM&Aの件数から800件(26.2%)上回る結果となり、2012年以来、7年連続の増加となっています。
内訳を見てみると、国内の企業同士のM&Aは2,814件行われています。こちらは全体のM&Aの件数の約70%を占めており、同じく最多であった2017年の2,180件から29.1%の増加となりました。
過去の推移を見てみると、1990年代後半から2000年代前半にかけて急激に増加したことがグラフからわかります。1993年のM&A件数は397件でしたが、2006年には2,775件とおよそ7倍の増加となりました。
この背景には、バブル崩壊以降、経済が低成長化する一方で発展途上国が勢いを上げたことによる企業間競争の激化、収益力が低下したことがあげられます。このような状況の中で、多くの企業が、即効性のある収益力向上、企業価値向上を図るためにM&Aを行いました。
加えて、企業法制の整備が進み、独占禁止法改正による持株会社の解禁や株式交換および株式移転制度の導入、新会社法の成立といったM&Aに関わる法制度の導入が活発化したこともM&Aの増加の一因としてあげられます。

2008年から2011年にかけて、M&Aの件数は急激に落ち込みを見せていることがわかります。これは、リーマン・ショックや東日本大震災の影響による国内経済の縮小に伴い、企業が急激な業績悪化に直面したことがあげられます。
しかしそれ以降は、M&Aの件数は再び増加しています。少子高齢化や人口減少を背景に、後継者不在の企業による事業承継や、海外市場への進出を図るために海外企業の買収、業界内の国際競争の激化を背景にした業界内再編などが積極的に行われているためです。
近年では、M&Aという選択は国内の経営者に浸透しています。M&Aを検討する目的は様々で、経営戦略のひとつとして行われることもあります。また、中小企業の経営者が抱える「後継者問題」や「人手不足」といった課題を解決する手段のひとつとしても、M&A
は有効活用されています。
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参考URL:2018年版 中小企業白書
中小企業を取り巻く経営課題とは?
上述の通り、2011年以降M&Aの件数が増加傾向にあります。このような状況の中で、一体、中小企業の経営者はどのような課題に直面しているのでしょうか。
後継者問題・経営の先行き不安
国内の中小企業は、会社の後継者が見つからないために事業が黒字でも廃業せざるを得ないという問題に直面しているケースが増加しています。日本企業の後継者不在率は、全国で66.4%といわれており、深刻な社会問題となっています。
この背景には、戦後日本の高度成長期に起業した経営者たちが高齢になり、引退を迎える年齢になりましたが、後継者のご子息が独立して会社を経営していたり、一流の企業や士業などに勤めていたりと、会社を継げないケースが増えているということがあります。
また、1995年から2015年にわたる20年間で、中小企業の経営者年齢の最頻値は47歳から66歳へ移動しています。このような昨今の経営者の高齢化に伴い、中小企業において経営者の後継者を確保することが困難な状況となっています。そのため、多くの企業や経営者が深刻な後継者問題に直面しているといえるでしょう。
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参考URL:中小企業景況調査報告書
参考URL:2018年版 中小企業白書
参考URL:全国「後継者不在企業」動向調査(2018年)
国内市場の縮小
人口減少や少子高齢化、デフレの長期化によって日本国内の市場規模は全体的に縮小傾向にあります。それに伴い国内市場での競争は熾烈化しており、M&Aを通じて事業の安定化を図ったり、新規事業へ参入し事業拡大するなど、積極的にM&Aに取り組む企業が増加傾向にあります。近年では、国内市場だけでは将来的な成長が見込めないと判断し、海外展開を図る企業も多く見受けられます。
設備の老朽化による生産性の低下
経済産業省、中小企業庁の『2018年度 中小企業白書』によると、2017年から設備投資の過不足が見受けられます。製造業、非製造業の別を問わず、全体的に設備投資の不足による生産性の低下が起きています。
事業の経営が困窮していると、施設や設備の修繕などに資金を回すことが難しくなります。結果的に施設や設備の老朽化は進み、古くなった設備の維持管理にも大きなコストがかかり、新たな設備投資に資金を回せないという悪循環に陥ってしまいます。
参考:2018年版 中小企業白書
人手不足
人材を獲得するために求人を増やしているがなかなか雇用に結びつかない、という状況にある企業が増加しています。特に建設業や小売業、サービス業といった業種において人手不足が顕著です。
ここ数年で「求人難」を経営上の問題として挙げる企業が多く、中小企業における人手不足が経営上の課題として強く認識されています。
近年の生産年齢人口の減少や少子高齢化といった問題を背景に伴い、現状の業務を見直して業務効率化を進めることで事業の円滑化が図ることが求められます。
参考URL:2018年版 中小企業白書
参考URL:中小企業景況調査報告書
参考URL:全国中小企業動向調査結果
M&Aが増加している理由

今後は後継者問題や人手不足、国内市場の縮小などといった問題が、さらに深刻化することが予想されます。
そのような状況の中で、現在は先述したような経営課題に直面していない中小企業の経営者も、今後も経営を円滑に行っていくためにその解決法を抑えておくことが重要です。近年、その解決策のひとつとしてM&Aの活用が期待されています。
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参考URL:中小企業・小規模事業者の生産性向上について
後継者問題の解決
経営者が高齢になり「会社を誰に承継するか」が大きな課題となっています。このような状況の中で、中小企業の経営者が会社を任せる後継者を見つけるための解決策の一つがM&Aです。後継者問題を解決し、借入金などの連帯保証も解消することが可能です。そのため、M&Aはリスクを最小限にして会社を存続させる手段のひとつとも言えます。
また、後継者問題だけではなく経営者自身の健康問題や市場の熾烈化、人手不足などの問題を抱えた企業の将来に対して日々差し迫ってくる不安を解決するための糸口ともなり得ます。
新たな後継者に企業を任せることで、従業員の雇用や取引先との契約が継続されるため、従業員や取引先への影響も最小限に抑えることが可能です。M&Aでの譲渡対価により、引退後の第二の人生を楽しむための資金に充てることもできます。
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事業拡大
企業の規模を拡大し、事業を軌道に乗せて大きく成長させたいが、実現するための資金や経験が不十分であるという場合にも、M&Aを活用することができます。資本や人手、設備などの経営資源の確保や経営のノウハウを短期間で取り入れ、事業をさらに拡大するためにM&Aは有効な手法です。
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事業ポートフォリオの最適化
多くの業界において市場が縮小している昨今、自社が置かれている現状を把握し、将来の事業計画を見直す必要があります。M&Aは今後の事業成長やニーズが高いと見込まれる事業に集中するための手段でもあります。
自社の伸ばすべき事業を判断して事業を見直すことでコストを大胆に削減し、そこで捻出した資金や人材をコア事業に充てることで経営を最適化することも可能です。自社が切り離しを検討している事業であっても、別の企業にとってはシナジーが見込める魅力的な事業である場合もあります。事業を取捨選択し、組織を再編することで、企業のさらなる成長に繋がります。
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まとめ
近年、中小企業の事業承継におけるM&Aは活発に行われており、M&Aは経営者の高齢化や人口減少に伴う後継者問題や人手不足を解決する有効な手段として注目を浴びています。一方で、M&Aは中小企業が新事業展開や事業規模の拡大を図り、より成長するための選択肢でもあります。
今後、2025年までに経営者が70歳を超える事業体のうち、法人の31%、個人事業者の65%が廃業し、約127万社で後継者不在が問題になるとされています。そのため、現状のままいくと2025年までに、累計で約22兆円のGDP(国内総生産)と約650万人の雇用が失われると予測されています。
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また、以下の記事で、2018年上半期に注目されたM&A事例を紹介しています。興味のある方はぜひご参照ください。
▷2018年上半期に注目されたM&A事例をご紹介します | 新規事業・イノベーション共創メディア
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