M&Aの相談は銀行、証券会社、税理士、弁護士、M&A専門家など、どこにすればいいのか?費用の違いは?

後継者不在の解決や事業拡大など、M&Aを検討する経営者の相談する理由にはさまざまな背景があります。しかし、どこにM&Aの相談をすればいいのか、費用はどのくらい違うのかなど気になる方も多いと思います。
本記事では、M&Aに関するよくある相談内容やそれぞれの相談先のメリット・デメリット、選び方を紹介します。
M&Aの相談内容の種類
M&Aに関する相談内容を譲受企業と譲渡企業、特に後継者不在のため事業承継を検討する経営者に分けてそれぞれ紹介します。
M&Aで譲受企業からのよくある相談内容
M&Aを検討する譲受企業の経営者からのよくある相談内容は以下が挙げられます。
・買収を検討しているが、何を準備すればいいのか
・事業を拡大できるのか
・買収するのに資金はいくら必要なのか
・M&Aは成約までにどのくらいの期間がかかるのか
・M&Aサポート業務への報酬はいくらなのか
事業承継についてのよくある相談内容
特に後継者不在のため、M&Aによる事業承継を検討する経営者からの相談内容で多いものは以下が挙げられます。
・会社や事業を承継した後のオーナーはどうなるのか
・中小企業でもM&Aを行うことは可能なのか
・従業員の雇用の継続や待遇はどうなるのか
・従業員や取引先にM&Aを検討していることを知られたくない
・M&Aを今すぐ検討していないが相談は可能なのか
・M&Aには仲介業者やM&Aアドバイザーは絶対に必要なのか
▷関連記事:M&Aの事業譲渡とは?事業承継に代わる選択肢
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M&A・事業承継の相談相手別のメリット・デメリット

M&Aを進めるには、さまざまな専門知識が必要となります。そのため、専門家に相談しながらM&Aを進めることが一般的です。ここでは、相談相手別にそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
会計士や税理士
M&Aを検討する際に、会計士や税理士に相談をするケースは多々あります。M&Aを進める上で、財務諸表の確認や企業の資産価値の算出、税金の計算など税務や会計の知識が必要となります。
そのため、会計士や税理士にM&Aの相談をすることにより、税務や財務といった専門性の高い知識を必要とする手続きをスムーズに行えます。
一方で、会計士や税理士が持っているネットワークには限りがあることが多く、自社の希望する条件を満たした相手先を見つけにくいというデメリットがあります。また、M&Aに関する知識を持っていない場合もあるため、M&Aの相談をする時にM&Aの知見があるか確認しておく必要があるでしょう。
金融機関(銀行や証券会社)
銀行や証券会社といった金融機関にM&Aの相談を行うメリットには、会計に関する知識を持っていることや、紹介できる企業の多さが挙げられます。また、金融機関によってはM&Aの専門部署を持っていることもあります。その場合、M&Aに関する高い専門性を持っている可能性もあります。
一方、デメリットとしては、金融機関が顧客対象としているのは一定規模以上の大企業が多いため、中小企業がM&Aのサポート業務を依頼することは難しい場合があります。また、最低手数料を高く設定していることもあり、中小企業によるM&Aを行う場合は手数料の負担が重くなってしまうこともあるでしょう。
▷関連記事:M&Aにおける銀行の役割とは?成功させるための特徴と注意点を紹介
商工会議所・自治体
M&Aの相談相手として商工会議所や自治体も挙げられます。地域特有の情報や地元の企業のネットワークがあるため、地方の相手を探しやすいメリットがあります。また、商工会議所や自治体などが提供する中小企業を支援するための助成金や補助金もあります。これらは融資とは異なり返済の必要がないことも多いため、中小企業でも活用しやすいでしょう。
デメリットとしては、一般的にM&Aに関するサポート業務を専門に行っているわけではない点です。M&Aの相手を探すことは支援してもらえるものの、登記や税務の処理などの手続きはサポートしてもらえないこともあります。また、助成金や補助金は申請できる期間が限られており、申請から受給までにおよそ1年ほどかかる場合もあります。そのため、事前に申請要項を確認しておくと良いでしょう。
仲介会社
M&A専門のM&A仲介会社も相談先の候補として挙がります。M&A仲介会社はM&A全体の流れを把握していることはもちろん、専門の知識と経験を持っています。希望する条件をもとにアドバイスを行いM&Aを成約に導いてくれます。
相談もとの意見を取り入れてもらえるため、納得のいくM&Aを行いやすいというメリットがあります。しかし、相手企業の選定がM&Aアドバイザー個人の紹介による属人的なマッチングになってしまうことがあります。
また、譲渡企業・譲受企業の片方のみと契約を締結し、アドバイザリー業務を行うFA方式をとる会社もあることや、会社によって料金設定が異なり、仲介手数料以外にも相談料や着手金が必要となる場合がある点に注意しておく必要があるでしょう。
最近では属人的な相手探しにならないようにマッチングサイトを提供する会社もあり、企業規模やエリアに関係なく相手を探しやすくなりつつあります。
▷関連記事:M&Aで企業が選ぶべきは仲介会社やFA、マッチングサイトのどれ?
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M&Aを円滑に進める方法は専門性が鍵

ここまでM&Aの相談内容や相談相手別のメリット・デメリットを紹介しました。ここでは、M&Aを円滑に進めるための方法を紹介します。
▷関連記事:M&Aの仕組みとは?企業買収の手法とその種類について
M&Aの準備
自社が納得のいくM&Aを実現させるためには、事前にさまざまな準備や対策をしておくことでM&Aを円滑に進めることができます。
M&Aは目的によって、選択するM&Aの手法や打診先の相手企業なども異なります。そのため、自社にとってより高い譲渡対価を取得することが重要なのか、事業の拡大が最優先なのか、会社の存続や従業員の雇用の継続が大切なのかなど、条件に優先順位をつけておくことが必要です。
また、複数の相手に相談することを想定して、自社の財務状況や経営状況などについても事前に把握しておくことをお勧めします。そうすることで、スムーズにM&Aの相談を進めることができるでしょう。
相談先の選び方
先述のように、M&Aは目的によって選択する手法や相手企業が異なってきます。また、希望する条件に合ったM&Aを成功させるためにはいくつか注意しておきたい点もあります。
M&Aの相談先を選択する際、コスト面も大切ですが、真摯に相談に乗ってくれるかどうかが重要となります。M&Aは検討してから成約するまでに短くとも数ヵ月〜1年以上ほどかかるといわれています。初めてM&Aを行う経営者の場合は、決して短くはない期間、不安な気持ちになることもあるでしょう。そのようなときに相談をしやすい、安心してサポートを受けられるという点も大切です。
また、M&Aには財務や税務、法務といった幅広い専門知識が必要となります。実際にM&Aの手続きが進行してから、しっかり契約書などを作成してくれるかや、企業の特徴や目的に合わせたアドバイスを行ってくれるかなど、信頼できる相談先を選択することがM&Aを成功させるためには欠かせません。上述の相談先の選び方や注意点を押さえた上で、安易に決めずに複数を比較検討した上で相談先を決めるようにしましょう。
まとめ
M&Aの相談先はそれぞれ特色があり、M&Aを検討する経営者の目的や悩みによって最善の選択は異なってきます。納得のいくM&Aを成功させるためには、それぞれのメリット・デメリット、特色を把握しておく必要があります。
M&Aに関する知識や経験が豊富にあり、真摯に相談に乗ってくれる相談先を選ぶことがM&Aを成功させるにあたり重要となるでしょう。
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