事業譲渡の際に注意すべき会社法の項目は?定義や手続き、重要なポイントをわかりやすく解説

事業譲渡はM&Aの手法の1つで、会社の一部または全部の事業を第三者に譲渡(売却)することを指します。事業譲渡の手続きは会社法に則って進める必要があります。
会社法には、株式の取得や役員の設置、資金調達など、事業譲渡以外にもさまざまなことが規定されていますが、事業譲渡を検討している方は、実施の際に係る法律については把握しておいたほうが良いでしょう。今回は、中小企業の経営者の方が知っておくべき会社法の内容を解説します。
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事業譲渡を行う際、会社法に記載されているどの部分に注意すればいいのでしょうか。該当する箇所を取り上げて説明します。
事業譲渡には株主総会の承認が必要
事業譲渡を行う際は、基本的には株主総会で承認を得る必要があります。効力が発生する前日までに、株主総会の特別決議で承認を得なければなりません。(株主総会での承認を必要としない例外的な場合については、次の項で説明をします)
この部分に関しては、会社法第467条に定められています。
会社法では下記の6つの場合の事業譲渡について、いずれも株主総会の特別決議による承認を要求しています。詳細は後述します。
- すべての事業を譲渡する場合
- 法務省令で定める方法により算定された譲渡企業の総資産(以下単に「総資産額」)の1/5を超える、事業の重要な一部分を譲渡する場合
- 親会社による子会社株式等の全部またはその一部の譲渡の場合
- 譲渡企業から譲り受ける事業が、譲受企業の総資産の1/5を超える場合(法第468条2項)
- 事業をすべて賃貸、または委任する場合
- 譲受企業が事後設立*1 により譲り受ける場合
*1.事後設立:会社設立前から予定していた事業等を、設立後に譲り受ける契約。
平成26年(2014年)の会社法の改正によって、上記の会社法第467条の1項二の二号が追加されました。こちらも株主総会の特別決議での承認が必要な項目です。
事業譲渡には株主総会の承認が必要ない場合もある
事業譲渡を行う際、株主総会の承認を必要としない場合もあります。どのような場合が該当するのか、まず会社法第468条を見ていきましょう。
先程紹介した、6種類の事業譲渡に記載している行為に関して、以下のような場合は簡易・略式の方法を採用することが可能となり、取締役会の決議のみで決定することができます。
・簡易手続き
譲渡企業は、事業の全部または重要な一部の譲渡について、譲渡する資産の帳簿価額が譲渡企業の総資産額の5分の1を超えない場合には株主総会の特別決議の省略が可能です。
・略式手続き
契約相手が譲渡企業の特別支配会社である場合、簡易手続きによって譲渡企業の株主総会特別決議の省略が可能となります。
特別支配会社とは、単独、あるいは100%子会社またはその他これに準ずるものとして法務省令で定める法人と合算して、ある株式会社の総株主の議決権の9割以上を保有する会社のことを指します。また、総株主の議決権の9割を上回る割合を定款で定めることができます。
本来であれば譲渡企業の株主総会における特別決議を必要としますが、譲受企業が総株主の議決権の9割以上を保有しているため議決は容易になります。そのため、株主総会での決議は不要とされています。
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